満開になった桜の花
溢れ出た花びらが
ひとつ
またひとつ
やがて
ピンクの絨毯になり
散ってなお
その美しさは色褪せない
小さな風に舞う花びら
垣根を超えて
お隣の庭に運ばれて行った
桜の命は短くて
誰かが口ずさむ
今年の花見は終わりだね
短い命をなごり惜しむ声
桜って
皆んなに愛されてる
だけど
桜の命は
そこで終わるわけではない
散って行く花びらの旅路には
ヒトの人生と重なるものがある
桜が散る時は
ひとが社会に飛び立つ時
人はその旅路で
初めて人生の舞台裏を観る
旅の途中には
辛いこともあるだろう
雨にうたれ
風に吹かれ
流され
打ちのめされ
途方に暮れることもあるだろう
孤独との闘いに
生まれたことさえ悔やむだろう
だけどどうか
気づいて欲しい
倒れた大地には
温かい血が通っている
見上げれば
そこにはあなたを見守る
大きな樹がある
あなたを育てた大地は
悲しいくらいに柔らかく
母の安らぎを思い出すだろう
風に揺らぐ枝を支える幹の太さに
力強い父の愛を感じるだろう
そう
あなたは生まれた時から
誰かに守られ
ずっと支えられてきた
そして知るだろう
美しさは
その何倍もの愛の上に成りたつものだと
人生の最高潮
その一瞬の一コマのために
どれほど多くの力に支えられ
どれほど大切に育てられてきたかを
そして気付くだろう
今度は与える番
それが未来のエネルギー
命に終わりはないのだと
繋がる世界に
敵などは存在しない
全ては同じ土
命のための糧
わたしもあなたも
同じ愛の中に生きている
過去のわたしが
未来のあなたになるために
こうして永遠に
愛の中で命は繋がっていく
桜散る
今年も
そして来年も
再び命が育まれるために