満開の呼び声とともに
どこからともなく
なだれこんでいた旅人の姿も
軒並み並んで
掛け声に余念がなかった露天商も
台風一過の如くに
瞬く間に過ぎ去って行った
しとしとと
降り始めた雨の音が
連れ去られていく桜の涙の
滴りやまない音に聴こえて
おもわず傘もささずに…
柔らかなピンクの花びらが
黒いアスファルトにこぼれた
祭りの後は
いつもそう
なんだか空しくて
取り残されてしまう
風の中
ヒラヒラ舞う桜の舞いに
役目を終えたばかりの
安堵の吐息がもれて聴こえた
幾重にも重なり敷かれた
フワフワの花びらの絨毯
散って尚こんなに
美しく魅せてくれるなんて
キレイだねって
思わず
声を掛けたくなってしまう
あれからずっと
空を見上げて
あなたを待ち焦がれていたけれど
今はこうして
地面の足跡追いかけてる
ありがとう
素敵な時間をありがとう
花びらの数ほどの
たくさんの幸せをありがとう
また来年も
幸せの花びら
運んでください
