私は海が大好きだ。
その深さも広さも
本当は何も知らないのだけど、
とてつもなく大きな海が大好きだ。
砂浜に波が打ち寄せる。
砂に隠れた私の足は、
まるでいたずらっ子のよう。
また来るよ、また来るよって、
かくれんぼしてるみたい。
海の前では、私はまるで赤ん坊。
時に優しい子守唄のように
心地良い波が、わたしを眠りに誘う。
時には叱りつける父のように
私を大きな心で励ましてくれる。
その青い瞳の奥にはどれ程多くの涙が秘められているのだろう。
過ぎ去った歳月の重荷を
一身に引受けているかのように
その雄大さには圧倒されてしまう。
なのに
こんなにも柔らかな優しさは
何処から来るのだろう。
母の胸の中で聴いた鼓動のように
この心地良さは休むことを知らない。
白い波が、
私の足をなでては返す。
何度も何度もくり返して。
頬に飛んだしぶきが一つ、
頬を伝って唇に触れた。
なんだかほろ苦くて、しょっぱい
涙の味がした。
私はやっぱり
この海が好き。
子供の頃からずっと、ずっ〜と、
憧れの人を思い続けるように
どうしようもなく大好きなんだ。
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