2009年11月10日

命の実

いのちの実


はじまりは真っ白で
まんまる〜いふわふわしたものだった
チョットしたことで壊れそうで
優しくやさしくいたわってあげなければ
消えてなくなりそうだった
やわらかであたたかい
いのちの実が
小さいけれど確かにあった

いのちの実は
ことばが好きだった
笑い声も大好きだった
なつかしい声がすると
うれしくて躍り上がった

かけがえのないものを知った
愛されることを知った
愛することも知った
生きてると感じた

時は過ぎ
何度目かの冬
かけがえのないものが
去っていった
大好きな言葉も
なつかしい声も
もう二度と聞くことはなかった

あたらしい声が
あたらしい言葉が
与えられた
はじめての感触に
いのちの実はおどろいた
寒くて
淋しくて
悲しくて
乾いてしまいそうな
感触に
逃げだしそうになるのをこらえた

時が過ぎ
いのちの実は
自分が小さくなっているのを知った
固く冷たく震えている自分を
どうすることもできなかった

生きることの喜びや
生きることの意味を
忘れてしまったいのちの実は
現実から逃げようとした

そうしなければ
そうしなければ
いのちの抜け殻になってしまうことを
知っていたからだ

いのちの実は
ひとつの決意をした

自分を捨てるため
最後の力を
ふりしぼった

posted by ネロリ at 01:58| 静岡 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ネロリの Cafe Poem | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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